2023年12月10日(日)に京都友の家(京都市左京区)にて、2050年CO2ゼロどこでもトーク「冬温かくて 夏涼しい 省エネの家」を開催しました。
主催は京都友の会、講師は有限会社ひのでやエコライフ研究所の山見拓さんです。
日本初の女性記者で教育者の羽仁もと子さんが、1903年に雑誌『婦人之友』を創刊。その愛読者たちが全国友の会を設立し、現在も日本国内180の拠点で、地域に根差した活動を行っています。
京都友の会は1929年に設立され、20代から90代までの幅広い会員が、衣・食・住・家計・子ども・環境のことなどを学び合ってきました。
そして、昨年度のどこでもトークで「わたしたちの暮らしとエネルギー」を開催し、CO2を削減するために省エネ推進と再エネ転換に取り組む大切さを学びました。
そして、子どもや孫に安心安全な未来を残すために、具体的な取組として「断熱」を学ぼうと、今年度もどこでもトークに応募されました。
まず、講師の山見さんより、暮らしの中のエネルギー消費量、快適な住環境について基本的なことをお話しいただきました。
最初に見せていただいたのは、月別の家庭からのCO2排出量のグラフ。冷房を使う7~8月より、暖房を使う12月~3月のCO2排出量が多いことが一目瞭然です。
用途別に見ても、年間エネルギー消費量の約50%は暖房と給湯に使われ、冷房に消費されるのはわずか2.4%程度。つまり、冬の暖房を省エネすることは、冷房で省エネする以上にCO2削減効果が高いと言えます。
冬の省エネのために重要となるのは家の断熱性能。しかし、日本の住宅の3分の2が断熱できていないそうです。
2025年までに新築住宅に一定の断熱性能が求められることになっていますが、現状の多くの家は、寝る前に暖房を切ると室温が低下し始め、朝方には外気温に近づいてしまいます。
参加者の皆さんに事前に調べていただいた家の室温も、そうした実情を表していました。
人間が実際に感じる暑さ・寒さ(体感温度)は、空気の温度(室温)だけはなく、周囲のモノの表面温度にも影響を受けているのだとか。
そして、空気の温度と、周囲のモノの表面温度の差が大きいと、不快に感じるのだそうです。
例えば、暖房したけれど一旦冷えて壁や天井の表面温度が下がってしまった部屋の場合、室温が26℃であっても体感温度は17℃というケースがありました。
一方、断熱性能の高い家で、暖房を切ったあとも壁や天井の表面温度が下がらない場合、室温が18℃でも体感温度が19℃というケースがあったそうです。
ここで、「実際に表面温度を調べてみよう!」ということで、サーモグラフィカメラで会場の温度をチェックしました。
このカメラを使うと、表面温度が高い場所は赤く、低い場所は青く表示されます。
家の中で撮影した場合、青く表示されるところが「外へ熱が逃げている箇所」、家の外を撮影した場合は、赤く表示されるところが「内側から熱が漏れている箇所」になります。
会場の室内を撮影してみると、窓の下が青く写っており、この箇所から室内の熱が逃げていることがわかりました。
このように表面温度が低い箇所の近くにいると、実際の室温より体感温度が低くなるので、底冷えのような不快感を感じることになります。
山見さんは「窓(開口部)は熱の通り道であり、冬も夏も影響が大きいので、ガラス面やサッシなどに省エネ対策をすることが大事」「冬は温かい部屋の空気を逃がさない『断熱』、夏は太陽の光を部屋の中に入れない『遮熱』が重要」とお話しされました。
そして、窓対策として冬は「内窓」、夏は「すだれ、遮熱カーテン」の効果が高いこと、その他に冬の体感温度を改善する工夫として、窓に断熱シートを貼ったり、床に断熱マットを敷いたり、暖房時にサーキュレーターや扇風機で部屋の空気を上下に循環させるといった対策を教えていただきました。
後半は、京都友の会メンバー宅の事例紹介。
断熱性能の異なる4つの家で、8日間にわたって、夜暖房を切ったときと朝暖房を点ける前に室温測定をされた結果が発表されました。
その結果、築100年の戸建と築30年の戸建では夜と朝の温度差が大きく、築10年の戸建と新築の高断熱マンションでは、温度差が小さいことがわかりました。
(青い線の築100年戸建と、緑の線の築30年戸建では、室温の上下が激しい。一方、赤い線の新築マンションと、黄色い線の築10年戸建では、室温の上下が緩やか)
また、メンバー宅で実践した断熱対策の具体例も紹介されました。
実施後のアンケートには、
などのコメントが。
CO2排出削減はもちろん、健康と生活の質を守るためにも大切な「住宅の断熱」。主催者が事前調査、講演、ワークショップ、事例発表と、より参加者を巻き込む工夫をして、講演で学んだことが実践につながっていく充実した学習会になりました。
※この事業は、令和5年度「エコ学区」ステップアップ事業に係る学習会等支援業務(2050年CO2ゼロどこでもトーク)として、(公財)京都市環境保全活動推進協会が実施しました。