2023年12月25日(月)に京都市立紫野高等学校にて、2050年CO2ゼロどこでもトーク「科学者の描く未来予想図~CO2ゼロ」を開催しました。
講師は京都大学フィールド科学教育研究センター准教授の伊勢武史先生。紫野高校の冬季補習期間に行われた「むらさきの冬季GC特別講座」の一環として、同校の1~2年生を対象に企画されました。
講演では、まず伊勢先生から、ご自身の大学進学にまつわるエピソードを語っていただきました。
子どもの頃から田んぼの生き物に親しんでいた伊勢先生。高校卒業後アルバイトをして過ごしていましたが、「やはり大学へ行って、生物について勉強したい」と一念発起し、アメリカ・ワイオミング大学に入学します。
ロッキー山脈の山腹にあるイエローストーン国立公園で、樹木の根っこを掘り起こしては直径を測る作業に精を出し、その調査はまさしく「肉体労働」だったとか。
その後、コンピューターシミュレーションによる将来予測を研究するために、ハーバード大学の博士課程に進学。奨学金制度が驚くほど充実していると同時に、競争の激しい世界だったそうです。 なかなか聞く機会のない研究者のキャリアデザイン体験談に、生徒たちは興味を持って聞き入っていました。
続いて、気候変動について、物質循環(特に炭素循環)の視点から解説していただきました。
森林は光合成の過程においてCO2を吸収し、地球温暖化抑制に寄与します。シミュレーション研究では、コンピューターの中で木を育てて、例えば100年後の森がどうなっているか予測できるのだそうです。
このまま何の対策もせずに人間がCO2を排出し続けると、100年後には世界の平均気温は、産業革命前に比べ3~5℃も上昇すると予測されています。二酸化炭素を地中に回収・貯留する技術(CCS)なども研究されていますが、本格的な実用化には至っていません。
伊勢先生は、シミュレーション研究は「未来をのぞく望遠鏡」であり、「人類には選択肢がある」「私たちは未来のために、何ができるかを考えて『今』行動することができる」と、これからの社会を生きる高校生たちにメッセージを発信されました。
後半は「将来の温暖化を緩和するため、今どの程度の努力をしてよいか?」というテーマでグループディスカッションを実施。
5グループに分かれて各自の意見を出し合い、最後にどのような意見が出たか発表をしてもらいました。
「暑いのは嫌だ。雪が見たい」「対策はすべき。他国との協力が重要」「エネルギー安定供給のための技術革新が必要」といった声があった一方で、「正直、温暖化を実感したことはあまりない」「冬が暖かい方が吹奏楽の木管楽器の音が安定する」「もっと優先する社会課題があるのでは」といった声もあり、生徒たちの率直な声を聞くことができました。
アンケートには、
・先生のアメリカ留学のお話がためになった。
・あまり興味を向けたことがない分野の話で、新鮮だった。
・CO2削減について考えるきっかけとなった。
・地球温暖化対策の方法がたくさんあった。他の人と意見交流することで、視野が広くなった。
などのコメントが。
今回の授業は、気候変動問題の最前線について専門家から学び、ディスカッションで自分の言葉によって表現することで、生徒たちにとって環境問題を「自分ごと」として考えるきっかけとなったようです。
>>>紫野高校ホームページにも当講座の様子をご紹介いただきました。
※この事業は、令和5年度「エコ学区」ステップアップ事業に係る学習会等支援業務(2050年CO2ゼロどこでもトーク)として、(公財)京都市環境保全活動推進協会が実施しました。